選定能力
ドラマを見ていると、何気ないセリフが急に物語の核心をついてきてハッとすることがある。
それはセリフの秀逸さというよりむしろ俳優さんの演技力によるものなのかもしれないけれど、それでもやはり、少しはそのセリフの魔力みたいなものもあるような気がする。
ネットでもふと目に入った文章を読んで、そんなつもりじゃなかったのに、はらはら泣けてくる時がある。
最近は内田裕也さんの喪主を務めた内田也哉子さんの言葉を見て「どうしてこんなに綺麗なことが、嫌味らしくなく言えるんだろう」と思った。
美辞麗句が並ぶとどうも嫌味のえぐさが出てきて苦手だが、この時ばかりはどうしてか、全くそう思わなかった。
人の心を動かす言葉には、一体どこに魂が宿るんだろうと思う。説明が上手な友達の話を聞いていると、あれほど心のこもったプレゼンをされてしまうと、彼の勧めるものはどれも正しいとすら思えてくるくらいだ。
内田也哉子さんのそれは、心を動かされるだけでなく涙を誘うものでもあった。
「人の涙を誘う」ということそれ自体は目的になるわけじゃないけど、それほどまでに人の心を動かす言葉に出会う時は、いつもその丁寧な選び方や、あまりの率直さに驚かされる。
面と向かって話す時一番難しいのは、本当に伝えたいことを伝えられるような、適切な言葉を選ぶ時間が十分用意されていないことなんじゃないかと思う。
そういう時の丁寧さは毎日の訓練でしか養えないものだと思うから、ただの世間話だとしても、ぱらぱら聞き逃してはいけないんだと思う。
気を張って生きるわけじゃないけど、自分のためを思うと人との会話は多いに越したことないのだろう。
人見知りも、ほどほどにね。