熱気
映画館が好きだ。家でいくらでも映画が見られる時代に、わざわざおめかしして映画館に行く特別感が好きだ。
ポップコーンの甘い香りや、重低音の響く新作映画の予告編、ロビーで時間を待つ人の高揚感。
どれも映画館特有の緊張感を生み出す、大切な要素だと思う。
特にこの間行った日比谷の映画館は天井が高くてフロアも広くて、東京ミッドタウン日比谷のフロアから少し隔離されたような構造になっているところがたまらなくよかった。
「映画を観る」という日常の延長線上になってしまいそうな体験を、心なしかランクアップさせてくれるような空間だった。ステキ!
毎月行きたいとも思ったが、正直なところ私は、そこまで映画が好きではない。
映画館に行く時のモチベーションはきっと、話題の映画を観るということではなくて映画館に行くということなんじゃないかと思う。
少なくとも、私はそう。映画を観るなら家でもできる。
けれどわざわざ映画館に行って映画を観ようと思うのは、話題作をいち早く観たいというのもあるにせよ、多くの人が一つのスクリーンを共有し、同じ映画を観ながら感動したり笑ったりするあの一体感、あるいはあの部屋に充満する集中力の熱気を吸い込むことに意味を見出しているんじゃないかと思う。
映画館でも、それ以外の場所でも、「熱気を共有する」ことの価値が下がることはないんじゃないかと思う。
場所に満ちる雰囲気は、画面を一枚挟んでしまえば絶対に共有できないものだと思うから。
映画館もそうだが、空間に払うお金は惜しみたくないと思う。
飲み会で一人5,000円と言われると、学生にはちょっと優しくないなあなんて思うけど、そのお金はお店に払っているのと同時に、その場を共有した友達にも払っているような感じがする。
だから「優しくない」とは思うけれど、「高すぎるでしょ!」という反感の気持ちは起こりにくい。
さてこれが会社の飲み会になった時、私は同じことを言えるのかしらん?
言えるかなあ、言いたいなあ。
この間、Twitterか何かで「香水ってものすごくオシャレ!」という投稿を見た。
なぜなら、香りを画面越しに共有することはまだできないから。たしかに!
画面越しに共有できないものをオシャレだと思う感覚は、きっと今風の感覚なんだろうな。でも、すっごくわかるよ。よくわかる。