思考の自由研究

世界で一番かわいい言葉は「もぐもぐ」だと思う

飛行機の窓から

久しぶりに飛行機に乗ったところ、思いの外子ども連れが多くてびっくりした。よく観察してみると小学生以下の子どもばかりが連れられていたので、彼らにとってこの時期の旅は、6歳以上の大人が春休みに入る前の前哨戦的小旅行なんだろうなとも思った。
 
彼ら大人が休みになれば、飛行機は軒並み満席、新幹線自由席の乗車率はきっと120%を超えるんだろう。私自身その時期を避けて飛行機を予約しているので、小さな子ども連れの家族と考えることは同じだと思った。
 
飛行機の中でも小さな子どもたちは大人しくて、教育が行き届いていることをうかがわせた。
 
中央の席から窓の外を覗こうとする私の方が小さな彼らよりもきっと忙しなくて、ずっと子どもらしい振る舞いをしていたかも知れない。
 
隣の女性が壁にもたれかかって寝てくれたおかげで、飛行機の小さな窓は私の独占状態にあった。
 
あいにくの曇り空を抜けた上空で青空を見たらなんだか安心してしまって、隣の女性よろしく、私もどっぷり寝てしまった。せっかくの独占状態を生かしきれなかったことには悔いが残る。
 
 
 
今日気づいたのだけれど、飛行機が着陸する時、私は心の中で「こんにちは」と言う癖があるらしい。同じ国の少し離れた場所に行くだけで、非日常の世界に足を踏み入れるような感覚があるからだと思う。
 
新しい場所に踏み入れる時の神聖な気持ちは、それ自体に特別な意味がなくとも、改まった姿勢にさせられる。
 
 
 
日常生活がどこかで断絶される感覚は、意図的にどこかへ組み込んでおかないといけないと思った。
 
ありきたりな毎日に感謝する謙虚な姿勢や、全くとは言えなくとも、どこか新しい場所へ踏み込む時の緊張感は、最大限努力しても忘れてしまうことがほとんどだ。
 
毎日の時間がただズルズル垂れ流しになるあの感覚は、無駄が多い分満足できない「空腹感」ばかりが印象に残る。出不精の私には、この空腹感が有り余る。
 
 
 
薄い雲の上に隠れていた青空を眺めながら、「ルーティン外の行動は、鈍った満腹中枢をリセットするために必要なんだなあ」と思ったりなどした。この出不精への戒めも込めて、なけなしの記憶力が力を発揮したらしい。
 
けれどその直後には(首の居心地の悪さに身をよじりながらも)ぐっすり眠ってしまったので、その時の感覚が残っていただけ、印象に残ったありがたい気分だったのかもしれない。
 
飛行機の中、心の底で言ったいつもの挨拶が、数日間の非日常を存分に過ごすきっかけになりますように。