大人の階段
人に向かって「文章を考えるのが好き!」と言い回るのは大変結構なことだが、果たして毎日新しい文章を考え考え、練りに練って投稿するほど私は文章を書くのが好きなのか?という疑問の意を込めて、今更だけれどきちんと確認してみることにした。
今は気分が良いから書けるのかもしれないが、これが途絶えた時は、ぜひ、何かを察してほしい。
その後、「誰も傷つけずに笑いを取れる漫才ができた、それがピンポンパンゲームだ」と彼らがどこかで言っていたらしいのを又聞きして、「まさに時代の潮流にあった笑いだ」と感動すらした。
私は特別この人たちのファンというわけではないが、そんな平和的思想の漫才師が今年も優勝できなかったと聞いて少し残念に思った。
この「人を傷つけないのに面白い」というのは本当に大切だなと最近身を以って感じていて、そしてそう思うたび、自分が少し大人になったような気もしてくる。
私が小さかった頃のテレビでは、なかなかハードに人を傷つけて笑いを取る番組が多かったと思う。誰かの、人と違う変な行動をするところをバカにしたり、人を騙して影から笑ったり、誰かの大切な物を壊して怒るのを待ってみたり。
しかもそれが特段変だとも思わず画面越しに笑っていたのだから、私もその加害者と同罪だろう。
心のどこかにその罪の意識があったかどうかは定かでないが、それでもやはりアホらしいコントの方がゲラゲラ笑えて好きだったので、長い間、私の人生におけるベストバラエティの王座は5歳の時にハマった「バカ殿様」だった。
あれはビジュアルで笑いを取りに来ているところもあるので若干ズルイという話はあるが、とにかく私はバカ殿様の特番があれば全てビデオに録画して見るくらいには好きだった。
しかしこの数週間で、その記録が塗り替えられるほどにハマったバラエティ番組がある。近しい人には散々面白さを伝えきってしまったけれど、改めて、あえてチープな言葉で言わせてほしい。マジで最高。
冴えない男性を5人組のゲイが大改造させて人生の大一番を成功させる、という番組なので、日本で言うところのビューティーコロシアムに似ているかもしれない。が、それとの決定的な違いであり最大の魅力となっているのが、ターゲットの性格すら大改善してしまうところだ。
この番組の魅力は、「誰も傷つけない」というよりむしろ、「冴えない誰かを褒めて褒めて褒めちぎって、全くの別人に生まれ変わらせる」という内容の高尚さにある。
これまで、周囲の人が劇的にイメチェンした時には「急に色気付いちゃって!」とか「調子乗ってるよね、最近」みたいな言論が起こるようなことが多かった。もちろんカワイクなった友人を見て心底感心したことはあったが、それに惹かれることはなかった。
人が生まれ変わる姿やありのままを受け入れるメンバーたちの真摯で前向きな姿勢には、学ぶことが多い。
そして人の幸せな変化を見て楽しい気持ちになれる番組の構成もさることながら、それを素直に受け止められるようになった自分の変化にも気づかされた。それもまた、自分の感性が大人になったからなのだろう。
学校で流行った、あの驚くほど不謹慎なじゃんけんゲーム「戦争」が、今後、小学生界隈で二度と流行らないでほしいと思うようになったのも、その一例かもしれない。あれは校則レベルで禁止した方がいいのではないかとすら思う。
大人になると「誰も傷つかず、面白い」が最低条件になってしまいがちだが、その高尚さというかありがたさというか、全員がそれを意識せずとも実現される、教養あるコミュニティに感謝の気持ちが尽きることはない。